久々野 こころ

■人間観察に学ぶ恋愛イロハ■俺色に染まれよと言う男とドン引きする女

行きつけのバーで出会った男女2人組のうちの男性の台詞に驚いてしまった。彼は相手の女性に対して「俺色に染まれよ」と捉えられる台詞を真顔で言っていたからだ。私は相手の女性の心中を察すると同時に、その男性が少しばかり羨ましく感じてしまった。

 

■人間観察9:「俺色に染まれよ」という意味を真顔で口に出す男

彼氏いない歴737日と8時間09分……。いつのものことだ、私は一人でバーにいた。カウンター席でぼんやりしながら呑んでいた。その日は客が少なく、私以外には私のように一人で各々お酒を楽しむ人、2人組でお酒を酌み交わす人がチラホラいた程度だった。そのうち私のそばにいた男女の2人組が「カップルではないものの、お互いに異性として意識し合っているであろう男女」だった。

私がその男女の2人組を「カップルではないものの、互いに異性として意識し合っている」と感じられたのは、指輪をしていないこと以外にも会話の内容がまさにそれだったからだ。「好きなタイプは?」をはじめとした「ああ、出会いからいろいろ経て今ではお互いに意識しているんだね、もう付き合っちゃいなよ」と思えるような、そんな会話が中心だった。

それに2人ともバッチリお洒落をしていた。「いつものバーだし」と普段の適当で楽な格好で一人呑んでいる私が申し訳無く感じてしまうほどに。特に、女性に関しては「今日のデートのために頑張ってお洒落をしたのかな」と思うほど良い仕上がりだった。赤の他人である私が内心微笑ましく見守っていたが、その平穏は男性の一言でぶち壊された。

というのも、「好きな異性のファッションは?」という話の流れだっただろうか、女性の格好について男性が「俺はこんな感じ(あなたが着ているような)の服よりも、あんな感じ(女性とは全く異なるタイプ)のが良い」とハッキリと真顔で言ったからだ。「俺色に染まれよ」とそのまま言ってはいない。しかし、そのような意味に捉えられる内容を「付き合う前のこの段階で言うのか」と勝手に白けてしまったし、その発言の後のしばらくの沈黙が何よりも怖かった。

 

□男性の一言を受けた女性の心中を察してしまった

対するその女性は、男性の一言にドン引きしていた。全く2人に関係の無い私から見ても完全に「ナシ」と判断していたように思う。全く無関係の私でさえ男性のあの発言には白けてしまったのだから、「出会いから何かがあって一人の異性として意識し、2人きりであの日あの時間にバーにやって来たほどには脈アリだと感じられた相手に、自身の趣味や格好を全否定され、俺のことが好きならこういう格好をして欲しいとも捉えられる台詞を言われた女性」の心中を察してしまった。

「振り向いて欲しい」「好きになってほしい」その一心で自分なりに精一杯お洒落をしただろう彼女の努力に一切気付かず、「俺色に染まれよ」とも捉えられる発言をした男性への落胆、今までに抱いた感情が間違っていたことの失望、むしろこの段階でナシだと判断できて良かったと考えるポジティブさ……本当に様々な感情が一瞬にして彼女の心の中に発生したはずだ。例の発言を受けた後の彼女は、それまでの雰囲気とは裏腹に心の底から早く帰りたそうにしていたから。

 

□全面的な自己肯定感は恋愛のチャンスを逃しかねない

例の発言を受けた彼女には同情しかなかったが、その発言をした当の本人である男性のことは少しばかり羨ましく感じてしまった。彼のように「俺色に染まれよ」というような内容の台詞を、「出会ってしばらく経ったものの付き合うまでには至っていない女性」に対して言えるほど、私は自分自身を全面的に肯定することができないからだ。むしろ、私は人より何倍も自己肯定感が低く、自信を持つことができない。あの場の男性のような台詞は絶対に言うことは無いだろうし、逆に私の場合には「こんな私でも好きになってもらえるのなら」という気持ちから進んで相手の色に染まっていくように思えてならない。

だからこそ、私は「俺色に染まれよ」と言えるほど、自分のことを全面的に肯定できる男性と彼の自信に満ち溢れた性格が羨ましく感じた。しかし、彼は「自分のことを全面的に肯定できる性格」のせいで、彼女の気持ちを急激に冷やしてしまったのも事実だ。もしもあの会話の流れで彼女のことを配慮したり、自身の好みを差し置いて好きになってもらいたい気持ちがあったりして「今日の君のような格好が一番好きだよ」という旨を言えていれば……きっとあの2人は晴れて恋人同士になることがはずだ。

彼の溢れんばかりの自己肯定感は、彼の幸せな人生に大いに役立っているだろう。少なくとも自己肯定感が低い私よりは幸せな毎日を送ることができているに違いない。しかし、話を恋愛に移してみると、「有り余る自己肯定感は、時に出会いから恋人関係へとシフトする際のチャンスを逃す原因になるのかもしれない」と感じられ、恋愛ではメリットばかりで無いように思える。

私のように自己肯定感が少なければ自信が持てず、出会いから恋愛に繋げるアプローチが難しくなる。世の中にいる男女から恋愛の教訓を得ようとするほど、それほど自信が無いのだから。かと言って自己肯定感が強すぎると、彼のように時には恋愛のチャンスを逃しかねない、相手のことを考えない発言をすることだってあるから難しい。




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